面白くも深い短編集:ちょいな人々(荻原浩)
悩んだり、もやもやしている人には、答えや考え方を押し付けるよりも、何かからヒントをつかんでもらう方がいい。そして、それに適したメディアはやはり本だと思う。
「ちょいな人々」(荻原浩)は軽妙な文体のおもしろ短編集なのだが、どの話も人間の深いところをついていて、生きる活力をもらえそうなヒントが詰まっている。
人間関係などで悩みがちな中学生くらいの子には、特にオススメしたい。人ごととして読める小説だからこそ、自分の悩みも客観視できるようになると思うのだ。
いじめをテーマとした「いじめ電話相談室」という話が、特に印象に残る。
電話相談室のスタッフは、いじめを苦にして自殺予告をしてきた中学生を救えるのか? それまでの話のパターンから、ちょっと情けない感じで終わっちゃうのかと心配したが、この話の主人公は最後まで強かった。
おひょいさんな人々
占い師の手の内をさらりと暴露する「占い師の悪運」も面白い。占い師の話術、いわゆるコールドリーディングを操りつつも、ちょっとさえない占い師が主人公。
これらの2話は重たいテーマも含んだ作品だが、特に中学生に読んでほしい話だ。
ほかの短編はもっと軽い気持ちで読んで笑える話である。かなり風刺は効いているけど。
どの作品も、人間の情けなさやかっこ悪さをコミカルに描きつつ、さいごには教訓めいたことを考えさせられるうまい作りとなっている。
「ちょいな人々」の「ちょい」は「ちょいワル」「ちょいモテ」などで使われる「ちょい」のこと。勤める会社が急にカジュアルフライデーを始め、今さらファンションを考えることに困惑しつつ「ちょいワルおやじ」を目指そうとする主人公を描いた「ちょいな人々」が、そのままこの短編集のタイトルとなっている。
表紙や各話の扉の益田ミリのイラストもいい。この人の絵、さいきんよく見かけるなぁ。
今日の蛇足
「読んだ4!」というTwitterと連動した読書記録サービスを使ってみることに。Twitterで本のタイトルと感想などをつぶやくだけで、自分専用の読書履歴ページが作れるというもの。そもそもTwitterって何だという人には、分かりにくい話でごめんなさい。
■ashinoyoshiさんの読書記録 - 読んだ4!
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