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テキスト・伊藤緑
2006/03/19

「新・明暗 / 見よ、飛行機の高く飛べるを」観劇レポート

演出家、永井愛氏の作品を続けて見た。これは、世田谷パブリックシアターの企画で、永井作品をほぼ同時に公開することで、作品を比べて観てもらうということ。そして、相乗効果で来場者数アップを狙っているのもありだろう。永井作品を初めて観た私だが、いずれも素直に楽しく観ることができた。なので、少しだけ記しておきたいと思う。

新・明暗
●公演日:2004年10月22日~11月07日
●場所:世田谷パブリックシアター
http://www.nitosha.net/stage/index.php
●作・演出:永井愛
●原作:夏目漱石「明暗」
●出演:佐々木蔵之介、山本郁子、木野花、下総源太朗、小山萌子、土屋良太、鴨川てんし、中村方隆


新・明暗 2004年11月07日観劇

原作は夏目漱石の「明暗」。芝居を観る前に大急ぎで原作を読んだ。といってもずいぶんボリュームのある本で、斜め読みだった事は否めない。でも、読んで行ったかいはあった。原作は未完なのだが、永井氏はちゃんと最後まで作っている。それも、原作当時の女性と今の女性をうまく絡めた形で。時代背景は現代になっているけど、原作を曲げてはいない。難しいことは語れないが、この作品を観て一番感動したのが、役者が演じるということのすごさ。芝居は、休憩をはさんでの二部構成になっており、全編を通して登場するキャラクターは、主役の津田由雄(佐々木蔵之介)のみ。他の役者はすべて、二役、三役をこなしているのだ。それも、津田の妻、延子を演じた山本郁子が、津田の前の恋人、清子を演じるというように。それぞれが、ある意味、同じようなポジションを持ったまったく別のキャラクターを演じている。舞台を観ている最中、すべてが二役、三役であることに気づけなかった(予習がたりませんでした)。でも、途中でもしや?と思い見始めたら、複数の顔を持つ役者の演技についつい見入ってしまった。多くの役者を使って創ることもできたこの芝居を敢えて8人という少人数で創った理由は、きっと場の一体感を創るためだ。生ものであるが故に、挑戦できる楽しみがあることを学んだ。

明暗

会場では、「清酒 新・明暗」と「明暗饅頭」が売られていた。



見よ、飛行機の高く飛べるを
●公演日:2004年11月06日~11月21日
●場所:シアタートラム
http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/jouhou/04-2-4-43.html
●作:永井愛
●演出:アントワーヌ・コーベ
●出演:井川遥、魏涼子、中村美貴、山谷典子、もたい陽子、伊勢佳世、村松えり、ともさと衣、笠木誠、藤沼剛、谷川清美、塩山誠司、久保酎吉、冷泉公裕、大方斐紗子、八木昌子

見よ、飛行機の高く飛べるを 2004年11月19日観劇

井川遥が舞台?ということで、敬遠された方もいると聞く「見よ、飛行機の高く飛べるを」。しかし、私は井川遥が舞台!なら観てみたいと思った方だ。テレビ女優の彼女が舞台でどこまで舞台プロとやり合えるのかも含めて観たかったし、自分自身が、初舞台を踏んだばかりということもあり、興味があったというのもある。舞台は明治末期、尾張地方の女子師範学校。東京生まれの設定である井川以外は、ほぼみな尾張弁。愛知出身の私は、懐かしいというか、本当の尾張弁はこんなにも美しいものだと再認識した。そして、女の子は今も昔も考えたりやったりすることって同じだなっていうこと、人は制限を受けると強くなるということを感じた。当時は、良妻賢母が良しとされ、女が新しいことをするなんてことはもってのほかという時代。その中にあって、平塚雷鳥や与謝野晶子という新しい女性が生まれていた頃。田舎の女子師範学校でも、女の力は育ち初めていたのだ。だけど、権力には適わなかった。最後はたった独りの女子が飛び立つのだが、その演出がまた驚きだった。

二作を観て

ほぼ2週間の間を開けて、永井愛氏作の芝居を観た。正直、これまで芝居は年に一回?いや2年に一回?くらいしか観ていなかったが、やはり自分が関わると強く興味を持つものだ。そして、いち観劇者という部分と、今この役者はどんな気持ちで演じているんだろう?と役者の心理を探るという気持ちが混じり合った思いで観ていた。プリセット大変だろうな、とか、ここまで真っ暗な暗転での板付きはきつそうとか。そんなことまで考えてしまったり。でも、いろんな角度から観ることがまた面白さのひとつ。作・演出家は、舞台で繰り広げられるものを観て欲しいと願うが、観劇者は違う。それぞれ勝手に好きなところを観て、好きなように解釈するものである。投げられたサイは、受け手の思うがまま。だから、感想も解釈も観た人の数だけあってしかりなのだ。永井作品を続けて観てしまったので、今度は違う作品を観て、比較をしてみたい。

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