本プチレビュー:となり町戦争(三崎亜希)
お化けというのは、見えないから怖い。ホラー映画の怖さというのも、幽霊なりモンスターなりが「出るぞ、出るぞ」という演出がポイントだろう。いわゆる「見えない影におびえる」という状態が、人間として一番恐怖を感じるものの一つだと言える。
広報誌に掲載された「となり町との戦争のお知らせ」を主人公が見つけることから始まるこの小説は、「見えない戦争」というものを描いている。
普段と変わりない日常の中で、それでも戦争が行われているという事実をうまく飲み込めない主人公。しかし、広報誌に掲載される「戦死者○○名」という記述だけが戦争のリアルをつきつける。
戦争の見えない影を感じ取ろうとしつつも、リアリティを感じられないまま過ぎていく毎日。しかし、主人公はいらだつでもなく、おびえるでもなく日常を過ごしていく…。
「出るぞ、出るぞ」という演出がこの小説のキモであるのだが、オチのようなものを期待するとちょっと裏切られるかもしれない。それでもこの「見えない戦争」がじわじわと迫ってくる様は、背中にじわっとイヤな汗をかくような感じで後を引く。
そして、教科書で習った歴史としての戦争や、湾岸戦争やイラク戦争のようなメディアで見た戦争よりも、よりリアルに戦争というものを感じる自分を発見するだろう。

「となり町戦争」は第17回「小説すばる新人賞」受賞作品で、作者の三崎亜希は福岡県在住の公務員らしい。本名は非公開だけど、顔は出しているのがナゾだな。亜希だけど男性だし。
読んでいて、ちょっと村上春樹っぽいなぁと感じていたら、文芸評論家の斎藤美奈子は「村上春樹の登場人物が村上龍の小説に入りこんだら、こんな感じかも。」と評していた。確かにそんな感じかも。
オススメーター:★★★★☆
(図書館で借りて読みました)
となり町戦争
三崎亜希 著
集英社
2004年12月発行
→amazonの商品ページ
→集英社・となり町戦争サイト


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